2008年09月26日に移転前のサイトで更新したものです
疲れました。
「明日かぁ」が「アシタカ(人名)」に聞こえる。耳がトランザム。
ねむいなぁ。
今寝るとかなり早く起きれそうだ。
友達と夢の話になったのですが、
どうやら散々追いかけられた挙句銃殺される夢や、戦争に巻き込まれる夢ばかり見るのはどうやらあたしだけだったようで。
いいなぁ、もうちょっと妄想炸裂別な感じの夢みたいな、一度でいいから。
そういや最近夢見てないな。
戦争の夢とかほんと見なくていいですけどね、あれはもうヤです。
初めは家族とか友達がいるのに、逃げて逃げて逃げて、走って走っているうちに一人になって。
周りは知らない大人ばかりだし、隠れるところなんてもう人でいっぱいだし。
やばいどうしようと思っているうちに警報と砲弾(?)の音が鳴り響いて、
やっと隠れられると思ったら、友達の一人が歩いていて、しょうがなく隠れるところを譲ったとたん、
爆撃で周りが何にも見えなくなって、気がついたら人が隠れてたところは木端微塵。
友達ももちろん死んでいて、うめき声があたりから聞こえて。
生き残ってた他の人に「逃げるぞ」って言われたり
もう散々で
「ほら、はやく!にげっ………危ない!」
後ろから男の子の声が聞こえた。自分と同じくらいの年ごろだろう。
その声が聞こえたと同時に、足元に赤い血が飛んだ。生暖かいそれは自分のものではない。
逃げることに必死だった。持っている武器も、もはや意味をなさない。生身の人間がモビルスーツを相手にするのに、この至近距離では危険すぎた。同時に敵を倒すチャンスでもあったけれど、無力な子どもには何もできない。
生き延びたければ逃げるしかなかった。なりふりなど構っていられない。だから刹那は後ろを振り向けなかった。
「おにいちゃぁん!」
聞こえてきたのはさらに幼い女の子の声だった。
だいぶ走ってから、刹那は半ば崩れた家の壁に隠れ、女の子の様子を窺った。
おそらく兄はもう死んでいる。女の子は動かない兄のからだを必死に揺すっていた。きっと女の子をかばったのだろう。
でも自分が死んでしまっては意味がないと刹那は思う。守ってくれる人がいなければ、あんなに幼い子はすぐに死んでしまうから。
自分たちが戦場で何かを守るには、最低限自分と相手の武器の条件が同じか、あるいは自分の身を守っても余りある力がなくてはならない。力のないものが誰かをかばえば、犠牲になるのは命だ。
刹那を守ってくれるはずの人間はもう死んでいる。その命を絶ち切ったのは自分だが、そうじなくても結果は同じだったのではないかと時々思う。誰かを守れる人間などここにはもういない。必死に守ろうとして、結局は死んでいくのだ。彼らは何も残していかない。ただその光景を刹那の心に鮮明に焼き付けて去って逝く。
だからそんな人間は好きになれなかったし、そんな生き方はご免だと思った。
*****
小雨が、降っている。
それはきっと、些細なことだったのだと思う。
本を読んでいるのに、あいつがべたべたと触ってくるから「うざい」と言ったのが始まりだったのかもしれない。
なんでそんなに俺に触れようとするんだと言ったら、「ん~、わからないかなぁ」とあいつは言った。
「好きな人には触れたいと思うだろ」
「………好きな人」
よくわからない、とロックオンに向き合うとあいつは少し困ったように笑っていた。
まただ。俺の持っている常識は、どうやら大半が一般の常識でないらしく、よくこうやって困ったような顔をされるのだ。
もっとも、今日こんななのは、雨のせいでもあるのだけれど。この男は小雨がだめなのだ。テロの後の記憶を思い出すから。初めて墓参りをした時、こんな小雨の中たった一人だったのだとこの男は言っていた。
「触れたいと思うのか?」
「思うよ」
「そうか」
でも時と場所を考えてくれ。そう思ったのが伝わったのだろうか、あいつは苦笑して少し離れた。
自分を好きで触れていたいというなら好きなだけ居ればいい。そうされるのは別に嫌だとは思わない。拒みもしない。
けれどロックオンがなにを考えているのか、刹那にはわからなかった。「好き」単語そのものをよく理解できない。
「………わからない」
思わず口に出してしまって、はっとする。ロックオンは窓に向けていた顔をこちらに向けて問うた。
「なにがわからない?」
「いや、べつに、なにも」
この男は頼りにされるとうれしいらしい。言ったら、ロックオンは懇切丁寧に説明してくれるに違いない。しょうがないなあとか言いながら、少しうれしそうに笑うはずだ。
それとも好きという感情がわからないといったら、切ない顔をするんだろうか。ありえる、と考えながら刹那は思った。ロックオンははやさしい。誰もが俺を放っておくなかで、一人手を差し伸べてきた男だ。いつの間に俺に向く感情が恋愛になったのかは知らないが、感情というものを大切に持ち続ける男。
どちらにせよ、今話をされてもうっとおしいだけだ。今は本を読んでいるのだし、わからないならわからないで本に集中できないのも嫌だけれど、本が読めないのはもっといやだ。
とは思いながら、ロックオンはずっとこちらを見つめてくるので、仕方ないと口を開いた。
「好きという意味が、わからない。なぜ、人は誰かを好きになるのか、俺にはまったく理解できない」
ロックオンはまったく驚いていない様子だった。わかっていたのか。
答えを探すかのように視線を少し泳がせ、それからロックオンは思いついたように言った。
「俺が教えてやるよ」
「いや」
制止の声を無視して、ロックオンはまたそばに寄ってきた。
自分よりもはるかに大きい体に抱きつかれる。ロックオンは器用というべきなのか無駄な気づかいというか、抱きつかれても本が読める。
雨の日は仕方ないかと思いつつも、ずっとこれでは。
「………なんだこれは」
「いや、落ち着くなと思って」
「やめろ」
「照れるなって」
「照れてないが」
体はがっちり固められてしまっているので腕も足も動かせない。
いい加減話して欲しくて少し力をこめて動いてみても、離してくれそうにない。
「照れてないし、教えてほしいとも思ってないが、」
刹那は淡々と言った。
ロックオンの顔は見えない。軽口を叩いているけれど、この様子だと少しも笑っていないだろうというのは、このとき簡単に想像できた。
けれど、どうしてかその時はわからなかった。小雨は音も立てずに地上に降り注ぐ。視界だけを曇らせて。
「俺は誰かの『好きな人』にはなりたくないし、ほしくない」
あとで後悔するとも知らないで、俺はその言葉を口にした。
++++++++++
2008.10.04 第一回目修正
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